ドラえもんとのコラボレーションエディションにおける久々のサイン入りポスターです。
数年前から僕は作品に吹きだしを入れて、其処に細々としたメッセージを書く様にして来ています。
理由はと言うと、芸術とはなんぞや？と問うた時に、その作家が生きたその時代を象徴せねばならない、と、常々考えており、で、今の時代の象徴って何があるかなあ？しかも僕自身のリアリティにも関係があって、と思い巡らせると、アメリカのヒップホップミュージシャン等との関係性が有るなぁと思いました。カニエウエスト、キッドカディ、ドレイク、トラビススコット、ジュースワールド、など、何故かある時期、何人ものアーティストがコラボを申し込んできてくれて、どんどんやりましたが、ヒップホップは流行歌の流れを変えており、その争点は、色恋のファンタジーの歌詞内容から、自分らの卑近な生活のリアリティと、リアリティTV的、メタリアリティの世界観を、ソーシャルメディアとミックスして作って行くと言う、コミュニケーションのやり方の変革ではありました。
その争点のずらしを、絵画の世界でもやってみたい、が、僕の吹き出し絵画シリーズなのです。

2019年「MURAKAMI vs MURAKAMI」香港大館(10 Hollywood Road, Central, 香港)

吹き出しの中で語ってる物語は以下の感じです。

僕が「ドラえもん」の絵を描く様になったのは、今から17年前の2002年、ドラえもんをテーマにして数十人のアーティストに『あなたのドラえもんをつくってください」（藤子・F・不二雄）というお題でアート作品を作って、其れが展覧会という初のイベントで、僕に絵画作品を描く仕事がありました。
ドラえもんのお話の中でも最も人気のあるタケコプターという頭につけて空を飛ぶアイティムのあるシーンを切り取ったような、作品を作りました。大きさは1.8m×1.8mくらいだったか。。。
その頃は日本人にとって漫画が公の美術館で展覧会をやるのは稀で、と言うかほとんど開催されていなくて、この企画のヒットのおかげで、次々と漫画の展覧会が日本中で開催される様になった！そういうエポックメイキングな展覧会でした。
で、15年後の2017年、その展覧会の第2弾が組まれて、またまたお誘いを受けました。流石に第2弾なので、もっとハードに現代美術的でなければ！と、 気張って、僕のメインモチーフのお花と、ドラえもんのお話の中のいろんなシーンを合体して、オールオーバーな抽象画的な文脈の構図で描いてみました。
大きさは3ｍ×6ｍで、かなり大きい。美術館にしか展示できないような大きさです。 でも、お客サマも慣れてきたもんで、前ならそんな大きな絵画、鑑賞するのに拒否反応があったであろうに、15 年の年月が経つと、OKになってて、なんというか、人のニーズの差に驚きました。
アメリカのアニメーションや映画の影響を受けつつ、低コストで出来る絵解きの物語伝授の方法として、日本の敗戦後の貧しさから生まれた、日本独特の文化と言えましょう。コミックとは似ているが少し違った文化です。戦争を生き抜き、空襲で焼け野原の中の食うや食わずの生活環境の中で、娯楽にも飢えていた多くの子供達に、少しでも喜びを共有しようとした漫画文化黎明期の作家達の中でも代表的な漫画家の1人が、藤子・F・不二雄先生です。
ドラえもんが誕生したのは、1970年、丁度、アポロ宇宙船が月面着陸などして、人類が未来へ想像力を飛翔可能だった頃。SFも日本でブームになってき て、そういう流れの中で、四次元ポケットから、主人公の願望を満たすための道具達がなんでも飛び出す設定が産まれてきたのでしょう。
漫画は、敗戦した日本が生んだ癒やしの文化そのものです。
僕はその文化に浸り、そしてアニメーションで成長した世代です。その流れを西欧式の現代美術に翻訳して、日本人にとって、一体意味があるのか？という疑問 もありつつも、ドラえもんと僕のお花のコラボの絵画シリーズは、アジア諸国で大人気となりました。ドラえもんの日本国外への拡散と、現代美術そのものの広がりの波に乗っかれた感じだと思います。作っている僕自身は、ドラえもんの世界の中に入り込めて、大変楽しく、そして藤子・F・不二雄先生の創作の片鱗に触れ られる気がして、とてもクリエイティヴな気持ちになれます。

です。
絵画を鑑賞する体験。
そして、ローカルな文化をアートのフォーマットで世界に拡散する行為。
其れを体現したのがこの作品です。

村上隆

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2021年10月６日(水) 12:00~

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・言い訳ペインティング ドラえもんとのコラボに関して(ポスター作品)(10月中旬より順次発送)

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